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  初めにことばありき 00000052 2015年05月16日 北村拓郎

 旧約聖書の創世記の宇宙創成は、神の光あれの御コトバで始まる。現代科学でも、宇宙の始まりは、極度に放射線(光)に満たされた状態(ビッグバン)で始まったという。一方、新約聖書のヨハネ伝の最初の書き出しは、初めにコトバありきで始まる。新約聖書は、ギリシャ語で書かれているが、ギリシャ語のロゴスが、日本語では、言葉と訳されている。ロゴスは、知恵と言う意味もある。人間は、知恵に優れ、言葉を理解し、話すということで、この書き出しが、選ばれたのであろう。宇宙の始まりと同じく、コトバの始まりにも疑問が多い。自然界は、光とともに始まったが(人間も生物の1種として、自然界に含まれる)、人間社会は、コトバとともに始まった。

 チンパンジーと人間は、600万年ほど前に、共通の祖先から、種として、分かれたといわれる。いまでも、生物としては、共通点が多い。DNA遺伝子は、それほど違わない 。しかし、文化的には、違いが大きい。人間は、言葉を話すが、チンパンジーは、言葉を話さない。

 人間にあって、チンパンジーにはない言葉を話すことのできる遺伝子は、見つかっていない。したがって、言葉を話すか話さないかは、環境すなわち、文化の違いであろう(しかし、人間の大脳皮質の大きさはチンパンジーに比べて3倍程度おおきいという。これに、遺伝子がかかわっていて、大脳の大きさ、ニューロンネットワークの複雑さがコトバを話せるかにかかわるという説もある)。


 言葉も、多くの段階を経て現状がある。すべての人類が言葉を話し、文化的に人類は、言葉を話す霊長類として、一体といえる同胞である。

 ある人類学者によれば、幼児が言葉を話すことができる前提として、想像力を備える必要があるという。想像力とは、今、目の前にある現実のほかに、いろいろな状況を想像できるかどうかである。別の言葉で言えば、概念力といってもよい。

 チンパンジーは、目の前のことは、わかるが、それからの想像力が、働かないという。私の仮説であるが、その原因は、幼児のときの、脳の記憶の状態、発育の違いにある(ニューロンーネットワークの形成)。

 脳は、生まれたときは、いわば、白紙の状態である。脳細胞の数は、生まれたときが最も多く、年齢とともに減少する一方であるがニューロンネットワークの形成は年齢を重ねた経験とともに形成される。チンパンジーの赤ちゃんは、24時間母親にしがみついており、母親に密着している。一方、人間は、生まれるとすぐに、母親から離され、ベッドの上などに寝かされる。人間の赤ちゃんは、常に、母親から離された、不安と孤独をあじあう。この底知れぬ不安の中で、想像力が、はぐくまれる。極端な放置は、発達障害のもとになるであろうが、適度な孤独が、想像力をはぐくむのであろう。想像力なしには、概念力が発達せず、ことばの習得ができない。

 人間の赤ちゃんは、脳の初期条件として、想像力を獲得し、チンパンジーの赤ちゃんは、想像力を獲得できない。このことが、人間とチンパンジーのその後の文化的な発育を大きく決定する。その遠因は、赤ちゃんのときの育て方にある。お母さんと、24時間のスキンシップがあるかどうかにある。

 言葉は、お互いのコミュニケーションを容易にするとともに、思考力を養う。言葉があって初めて、人間生活と、人間社会が、成り立つのである。まさに、初めに、コトバがありきである。コンピュータの発明も、コトバの発達の賜物である。

 平成27年5月
 北村 拓郎
  




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